音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、「全然ためにならない」とみずから言う春風亭昇太の落語の魅力についてお届けする。
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現代の「面白い落語」の第一人者、春風亭昇太。彼の独演会に行くと、落語とは究極の「癒し」だなぁ、とつくづく思う。
昇太はよく独演会のオープニングでこんなことを言う。
「今からあなたの人生に2時間の空白が訪れます。全然ためにならないし、何も残らない」
ここに落語の魅力が凝縮されている。
下北沢の本多劇場や新宿の紀伊國屋サザンシアターで毎年開催される昇太の独演会「オレスタイル」、今年は本多劇場で10月16日~18日の3日間、計5公演(17日と18日は昼夜)行なわれ、僕は17日の夜の部を観た。昇太の演目は全公演共通で『替り目』『二番煎じ』『死神』の3席。
昇太自身が企画する「オレスタイル」ではネタおろし(初演)や蔵出しの演目が聴けることが多い。今回は『替り目』と『死神』が蔵出しで、どちらも10年ぶりくらいにやるのだとか。