〈東日本大震災から1年、社員28人(当時)で奮闘する石巻日日新聞の“今”を追った。冒頭は石巻からの生放送で始まり、窪田さんは「11時の石巻の今、雪…」と舞い始めた雪をアドリブで挿入。「視聴者のかたと“今の石巻”を共有したかったんです」(窪田さん)。〉
2010年に放送された画家・石井一男さんの回も忘れられない。カメラが入るとスッと影絵が映り、「石井は影絵で遊んでいた」と描写するナレーションがついていたんです。それがテストを繰り返してそぎ落として、最終的に「遊んでいた」のみに。そうか、たった一言でいいじゃないか、と。石井さんの清らかな生き方を表すようなナレーションになったと思っています。言葉ではなく画で語っているので、ナレーションはふっとそこへ寄り添えば世界観ができる。映像だけで語る“間”も大事。それも番組ならではの持ち味です。
──収録の中でのピンチは?
映像やナレーションの言葉で心が揺れて収録の時に涙が出たり、時には笑いが止まらなくなったりすることかな。それで中断というのは実はわりとあるんですよ(笑い)。
でもね、そのボルテージで「どうです、これいいでしょう!」と読めば、見るかたは引いてしまうから、ひと呼吸置いて「どうですか(静かにしっとり)」ってね。引いたとしても、ぼくの中の感動は音声で伝わる。
テストで感情を吐き出して冷静になっても、本番中にVTRの音楽でまた感情が揺れそうな時もある。そんな時は手元のスイッチで音量を調節して気を静める。
収録中にマイクのオンオフを切り替えるカフは感情の切り替えスイッチであり、素の窪田等からナレーターの窪田等へ切り替えるスイッチでもあるんです。
※女性セブン2018年1月1日号