がんなど命にかかわる病気にかかった際に、医師が患者に行なう「余命宣告」。基本的には病気が進行しており、治る見込みが少ない患者に対して告げられるが、そもそも「余命」とはどのように決められるのか。
患者からすると、病気の悪性度や進行度、年齢や体力など、自分自身の状態を医師が診断して算出すると考えがちだが、実はそうではない。患者個々の状態に関係なく、その病気の「生存期間中央値」を告げるケースが大半である。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師がいう。
「その病気の患者さんが100人いたら50番目に亡くなった人の生存期間です。がんで亡くなる方は、早く亡くなるほうも遅く亡くなるほうもバラつきが大きく平均値で表わせないため、中央値を使用します。
たとえば、『余命3か月』と言われたら、『半数の患者は3か月以内に亡くなり、もう残り半数は3か月以上生きる』という意味です。それなのに、実際の医療の現場では数字の意味を説明せずに『余命はあと3か月』と口にしてしまう。『余命』という言葉を軽々しく使ってしまうところが問題です」
医師が宣告する「余命」が正確性を持つようになるのは、症状が重篤で、生死の境にあるような場合に限られるという。
「『3週間以内』と宣告した場合、85%の確率で当たると言われています。体のむくみや呼吸困難といった“最期の予兆”が明確に現われているからで、『○か月』『△年』といった余命宣告とは意味合いが異なる」(同前)
ただ、医師の側にも、余命宣告せざるを得ない事情もある。おおたけ消化器内科クリニックの大竹真一郎院長はこう言う。