子どもたちを差し置き、ブランコなど公園の遊具を独占するも、実は安全点検をしている作業員だったという微笑ましい作品も印象に残っているし、ここ2作はガテン系に扮したり、職場のライバルに扮したりしている新井浩文との共演も話題だ。
さらに、ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PS4」のシリーズCMでは、ゲームに熱中するが余り、キャラクターのコスチュームで酒席に現れたり、ゲームの登場人物名や用語を会社のプレゼン中に連発したりするビジネスマンの役。また、子供のようにオモチャ売場のフロアに寝転んで「やりたい」「やりたい」と駄々をこねる父親役も好評だった。
そうかと思えば、ストーリア「MARO」ではアフロヘアで踊りまくっている。15秒とか30秒というサイズのCMにおいては、山田の瞬発力が物を言い、濃くて毛深くて小顔とは言えない彼がキメる表情には強いインパクトがある。
こうしたCMでのブレイクと共に、ドラマや映画では、あらゆる役に憑依するように演じることから「カメレオン俳優」と呼ばれ、後に映画化もされる『闇金ウシジマくんシリーズ』(毎日放送・TBS系)や鬼才・福田雄一氏の監督・脚本による『勇者ヨシヒコシリーズ』(テレビ東京)の主演が大きな話題を呼ぶ。さらに、プロの批評家が「いま、もっとも面白い取り組みをしている」と高く評価するテレビ東京のドラマ班と共に『山田孝之の東京都北区赤羽』、『山田孝之のカンヌ映画祭』、『破獄』などを業界が認める話題作にのし上げたことでも注目されている山田孝之。
そんな彼の20代のときの評判というと、特に取材記者の間では「難しい人」「暗い人」「喋らない人」などと、もっともインタビューしづらい若手俳優の一人だった気がする。
そこには映画『電車男』で得た評価を急降下させてしまうほどのスキャンダルが絡んでいたことは、大人の業界関係者なら覚えていることだろう。
因って、バラエティー番組の出演はほとんどなく、ドラマの番宣で情報番組に出て来ても、サービス精神の欠片も感じられない彼の言動に、数字はなかったと記憶する。
そんな山田が結婚したのは2012年、妻の出産は翌年で、そこから彼のイメージがいっきに変わり始める。山田夫妻が、親友の玉山鉄二に一般女性を紹介し、トントン拍子でゴールインしたことも、“意外なエピソード”として広まった。ちなみに玉山には、それより前、結婚間近とウワサされた某女優との破局劇があったのだが、彼も結婚によって運気が上がったクチ。いまも玉山家で朝まで飲むことが度々あると聞く。
そしてトーク番組などで「山田孝之は実は面白い男」と言い出したのは、その玉山や小栗旬を始め、プライベートで飲んだり、演劇論を交わしたりする同年代の俳優たちだった。