かつては全国各地に存在した遊園地。しかし、1990年代に入ると徐々に姿を消して行き、日本全国の公園・テーマパーク数は、1997年の192か所から、2016年の135か所と、20年で約3分の2にまで激減している。
一方で、1度は経営が傾いたものの再建して「新たな魅力」を打ち出し奮闘している遊園地もある。
大阪府の枚方公園駅から歩くこと3分、『ひらかたパーク』の入場ゲートが見えてくる。ゲートをくぐるとイメージキャラクターを務めるV6の岡田准一(37才)のポスターが目につく。その前で写真を撮る女の子の姿もちらほら見られる。
105年の歴史を誇る、老舗の遊園地で地元認知度100%にもかかわらず、2011年には来園者が100万人を切り、閉園の危機に陥っていた。勤続40年のスタッフが述懐する。
「神戸ポートアイランドも、宝塚ファミリーランドも潰れ、うちもUSJにお客さんを奪われてしまって…。一時期は閑散としていてお客さんもまばらで、いよいよ次はうちの番だと覚悟していました」
しかし、2013年には枚方市出身の岡田を「ひらパー兄さん」に就任させ、「1年で入園者数100万人を達成しなければ岡田准一がクビになるキャンペーン」など、斬新なPRを行い、V字回復に成功した。
ひらかたパーク広報の秋山和洋さんが言う。
「これらは非常にお客様への浸透力が強く、それ以降は右肩上がりで来園者が上昇。2016年度は120万人ものかたに来園いただきました」
飲んでいる最中に「明日ひらパーに行こう」と突如盛り上がり、来園したという男女7人組は「ノリで来られるゆるさが魅力」と語る。
「7人みんなが好きに楽しんでいますよ。メンバーは4才の女の子から48才の中年男子までだけれど、みんな思い思いに過ごしています。USJもいいけれど、疲れちゃいますね。ひらパーは、適度に放っておいてくれるような雰囲気がちょうどいいし、乗り物もご飯を食べるのも、並ばなくていいのがうれしいです」
『遊具がしょぼい』『古めかしい』を逆手に取った遊園地も健在だ。90年以上、区民に親しまれている東京都荒川区の区営遊園地『あらかわ遊園』には、子供の笑顔があふれ、歓声がこだまする。
大道芸の人垣が目を引く日曜の昼下がり。園内のスカイサイクルは自分の足でこがなければならないし、他の遊園地にあるような目ぼしいアトラクションは見あたらない。
「遊具は正直、デパートの屋上レベルだけど、逆にそれがいい」
利用者からはこんな声が聞こえてくる。
「親子三代で遊びに行っても、狭いから子供を見失わないし、大人たちも走り回らなくてすむので疲れない。危ない遊具はないから孫はもちろん、80才のおばあちゃんも一緒に遊具に乗ることができる。しかもスタッフさんも子供たちに目配りしてくれているから安心なんです」
名物フードは近所の『たこせん』。店には長い列ができている。
「名物といっても、おせんべいにたこ焼きが挟んであるだけ。でも、焼いているおじいちゃんが手を止めながら、一人ひとりに『どこから来たの?』『楽しかった?』と、話しかけてくれるんです。そのせいで時間がかかって、行列になっているっていうこともあるんだけど(笑い)」(来園していた40代の主婦)
地味な遊園地ながら大盛況の理由を、観光レジャーを専門とする大正大学教授の白土健氏が分析する。