ライフ

【山内昌之氏選】2018年に読みたい「教養の意味」

山本博文・著『歴史の勉強法』

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? 明治大学特任教授の山内昌之氏は、「教養」を読み解く本として、『歴史の勉強法』(山本博文・著/PHP新書/860円+税)を推す。山内氏が同書を解説する。

 * * *
 歴史を語るには、それなりの基礎知識と歴史観をもたねばならない。山本氏の紹介する社会学者二人の対談などは、そうした準備もなしに歴史を語る危険性を教えてくれる。その一人に言わせると、源頼朝が任じられた右近衛大将は「下っ端のノンキャリア」だから頼朝が京都にいる必要がないというのだ。

 日本史家の著者は朝廷武官の最高官職を「下っ端」と言い切る思い込みに呆れたようだ。こうした発言が生じるのは、史料に地道にあたる苦労もせず、政治軍事の基本機構や有職故実について勉強したこともないからだろう。

 それではダメなのだ、と示唆する山本氏は、この社会学者が徳川幕府に圧倒的な軍事力をもつ「幕府軍」は存在しないという指摘にもさぞ驚いたことだろう。大番、書院番、小姓組番などを知らなければ、そもそも何故に番町という地名があるのかも分かろうはずがない。本書は、こうした間違いを犯さないように、日本史を学び語るときに必要な作法を教えてくれる。

 暦と時刻については「換暦」という便利なネットのサイトを紹介し、金銀銭の交換レートは図解と表で分かりやすく説明している。1両は銀50匁、銭4貫文(4千文)になるので、蕎麦1枚が16文だとすれば480円(1文が30円)見当になり、現代人の貨幣感覚からも納得できるというのだ。本書は、この種の具体例も豊富なので、時代劇や時代小説を楽しむ上でも安心できる手がかりになる。

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト