臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、連日テレビで見ない日はない、角界のゴタゴタについて言及。
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年をまたいで、まだまだ続きそうな元横綱・日馬富士関による傷害事件。暴行を受けた平幕・貴ノ岩関の師匠、貴乃花親方が相撲協会の聴取要請を拒み続けるなど、協会と貴乃花親方の対立がますます鮮明になっている。
20日には、両国国技館で相撲協会の臨時理事会が開かれたが、テレビに映し出された貴乃花親方は、これまで同様、椅子の背に深くもたれて胸を張り、硬い表情ながらあごを上げ、ふんぞり返ったように座っていた。貴乃花親方の母、藤田紀子さんは「姿勢が良すぎてふんぞり返っているように見えるけど、ふんぞっているんじゃない」と、某番組で擁護するようなコメントをしていた。だがはた目には、この姿勢は理事会との対決姿勢を象徴していように見えるだろう。
長テーブルをはさんでずらりと座る理事の面々。椅子に深く座り、背にもたれている親方も多いが、どの親方もふんぞり返っているようには見えない。貴乃花親方だけが、そこから浮いているのだ。
なぜ、貴乃花親方だけがそう見えるのかというと、テーブルから頭までの距離が、他の親方よりも離れているからだ。人はストレスのあるものやマイナス感情を抱くものを避けたいと思うと、そこから無意識に身体を遠ざけようとする。テーブルから遠いということは、それだけ理事会へのマイナス感情やストレスが強いように見える。
貴乃花親方は、胸を張って背筋を伸ばしているが、肩甲骨をぴったり背もたれにくっつけるようにして、肩を大きく開いている。だから余計、ふんぞり返ったように見えるのだが、このような姿勢は人の心を強くさせるのに効果があるといわれている。人の心は、自分がとっている姿勢に大きな影響を受けるからだ。
これはパワーポーズと呼ばれる姿勢だ。自信を持ってプレゼンしたい時や面接を受ける時など、その前に、足を広げ腰に手を当てて胸を張って立つポーズや、握りこぶしを作ったり、貴乃花親方のような姿勢をすると、気分が上がり強気になれるというもの。
硬い表情で口をまっすぐに結んだ八角理事長の真正面の席に、パワーポーズの貴乃花親方が座っている。真正面に向きあう席は、心理的な緊張を最も高め、意見を言い合う、競い合う時に適しているといわれる位置だ。身じろぎもせず、表情を変えることなく対面する2人がまっすぐ見合っているのだから、画面を見ているこちらには対決の構図にしか見えない。そのため、貴乃花親方の沈黙に余計に特別な意味を感じ取るのである。