名調教師が「パドック」について語る
本日はいよいよグランプリ有馬記念。キタサンブラックの引退レースということもあって大いに盛り上がり、パドック回りは早くからファンで埋まりそうだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、パドックの役割についてお届けする。
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出走馬の登場を今か今かと待ち構えている大勢の人間たち。しかしそこに登場する馬に誇らしい思いはありません。いつも面倒を見てくれる厩務員が寄り添ってくれているけれど、不安でいっぱいのはずです。
パドックでの周回はリラックスするのが理想。リラックスしながらも、我慢させています。首を激しく振ったり跳ねたりして馬っ気を出す馬を時おり見ますが、レースに向けての我慢ができていない。パドックでじっとエネルギーを溜めることが大事です。
GIレースでは、周回中のパドックの中に馬主さんや調教師が歓談しながら愛馬の様子を眺める光景がおなじみです。途中からジョッキーも輪の中に入って華やかな雰囲気を演出しますが、その他のレースのパドック周回は緊張感の中で淡々と行なわれますね。
締切15分ほど前になって「とまーれ!」の号令がかかった後、調教師が馬に駆け寄ります。ジョッキーたちも整列して一礼し、小走りにそれぞれの騎乗馬に向かう──パドックではお馴染みのシーンです。
古くからの競馬ファンにとっては、調教師になったかつての名ジョッキーの姿を見るのが楽しみかもしれません。現役時代同様軽やかに馬に走り寄る若手もいれば、体型がすっかり変わってしまった(笑い)ベテランもいます。みな、これからレースに臨む愛馬の状態を確認しにいくわけです。