2018年は明治元年から150年。NHK大河ドラマは、西郷隆盛を主役にした『西郷どん』(鈴木亮平主演)だ。維新回天の英傑・西郷がどのような環境で育ち、人生の最期をどう迎えたのか──。歴史通で知られる元NHKアナウンサー・松平定知氏が、西郷の故郷・鹿児島を訪ね、激動の時代を駆け抜けた彼の人生をたどった。
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私は西郷隆盛の故郷薩摩の地を歩くたびに、その人気がいかに飛び抜けているかを実感する。
銅像ひとつとっても、鹿児島市立美術館そばの、県のシンボルと言われる軍服姿の立像、空港近くの西郷公園にある、実在の人物としては高さ10.5メートルという日本一の大きさを誇る立像など、いくつもの「西郷どん」が立っている。その他、誕生の地、終焉の地などに設けられた石碑から、若き日に座禅を組んだ石、晩年に自ら作った手水鉢に至るまで、実に多くの史跡がある。その数は薩摩の他の志士とは比べ物にならないほど多く、こと地元に限れば高知における坂本龍馬をも凌ぐ。そして、西郷を愛する人は日本中にいるのだ。
◆自殺未遂に二度の遠島……維新までの歩みは波瀾万丈
なぜ西郷はかくも人々に愛され続けるのか? その理由を、薩摩を訪ね、生涯を辿ることで探ってみたい。
文政10(1827)年、西郷は鹿児島城下の下加治屋町(現・加治屋町)で下級藩士の長男として生まれた。ちなみに、下加治屋町は西郷を始め、大久保利通、山本権兵衛、大山巌、東郷平八郎など明治政府の要人を数多く輩出し、司馬遼太郎氏は「明治維新から日露戦争までを一町内でやったようなもの」と評した。