65歳受給開始が基本のサラリーマンの年金(基礎年金、厚生年金)は現在、60歳までの「繰り上げ」受給と70歳までの「繰り下げ」受給が可能だ。繰り上げると毎月の額が減り(1か月ごとに「0.5%減額」)、繰り下げると逆に増える(同「0.7%増額」)。議論が進行中の「75歳まで繰り下げ」の選択肢が導入された場合、60歳受給では毎月の年金額は30%カット、75歳受給だと84%もアップする。
もちろん、繰り下げるほど「無年金期間」が長くなり、その間の安定収入をどう確保するかが問題となる。重要なのは60歳以降の「働き方」だ。60歳以降も正社員で「バリバリ働く人」の場合をシミュレーションしてみよう。
60歳以降も正社員として働き続ける道もある。その場合、フルタイム労働なので厚生年金の被保険者として保険料を支払うことになる。社会保険労務士・北村庄吾氏の解説。
「正社員として働きながら年金を受給すると、ほとんどの場合は支給停止部分が出てくることになるので、『繰り上げ』はやめたほうがよい。その一方で、年金保険料を長く払うので、将来の受給額は増えます。1年加入期間が延びると、毎年の年金受給額はおよそ2万5000円増えますから、65歳まで正社員で働ければ、年金を年額約12万5000円増やせるのです」
ただし、65歳以降も働き続ける場合、今度は年金と給料の合計が46万円を超えると年金の支給停止部分が出てきてしまう。
「体力に余裕があって65歳以降も働けるなら、年金は『繰り下げ』という考え方になるでしょう」(同前)