年金は何歳から受け取るべきか──内閣府の検討会などで、受給開始を「75歳」まで選べる制度の導入が提言されている。「少しずつでも『長く』受け取る」か「期間は短くても『たくさん』受け取る」か。これは「どちらが正しいのか?」という二者択一の単純な判断ではない。「年金博士」こと社会保険労務士・北村庄吾氏はこういう。
「定年退職後の人生において、『お金』はもちろん重要ですが、心身の健康、そしてどんなことに時間を費やしたいか、といった要素も大切になってきます。
体が比較的よく動く60代のうちにしかできない目標があるのか、70代まで長く続けられる趣味を持っているのか。そうしたことも踏まえて初めて、60歳以降の『どの時期』にお金が必要かというシミュレーションが可能になってくる」
つまり、「繰り上げ」「繰り下げ」の判断は、夫婦の趣味、定年後の楽しみや生きがいをどこに見出すかによっても変わってくるのだ。それでは、元気な60代夫婦生活をエンジョイしたい人の場合はどうか。
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されるのが「健康寿命」だ。厚労省の発表によれば、日本人男性の健康寿命は71.19歳(2013年)。
「毎月の年金額は『繰り下げ』するほど大きくなりますが、体の自由が利かなくなってからたくさん年金を受け取っても、趣味に使うのは難しくなります。“健康なうちにたくさん受け取ると割り切って『繰り上げ』受給する”というのも、考え方としては成立するのです」(前出・北村氏)