大晦日に放送される歌番組NHK『紅白歌合戦』。かつては大晦日といえば、家族で紅白を見ながら食卓を囲む人が多く国民的番組とも言われたが、今は民放の番組を楽しむ人や、そもそもテレビを見ない人も増えている。そんななかで、紅白の存在意義はどこにあるのだろうか? コラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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今年のNHK『紅白歌合戦』は、なぜ小林幸子を出場させなかったのだろう? 先日放送されたBS朝日『日本の名曲 人生、歌がある 生放送5時間スペシャル』を見て、今さらながら、そう考えてしまった。そもそも「紅白」の魅力とは何か。
思いつくままに記してみれば、「大晦日だけの豪華な歌の祭典」「その年を代表する歌手が一堂に会しての生放送」「初出場歌手、久々復活歌手の感極まる歌唱シーン」「よく知らないけど歌がうまい歌手、名曲との出合い」「日本で一番人気(だと思われる。抽選による観覧当選倍率は1000倍を超えることも)の無料公開番組」といったところだろう。
しかし、多チャンネル時代の今、上記の魅力ポイントのほとんどは民放の特別番組にしてやられてしまっている。テレビ朝日の『ミュージックステーション』がスペシャルで長時間生放送になるのは、当たり前のようになっているし、TBSは安住紳一郎司会の『あなたが聴きたい歌のスペシャル』や『音楽の日』を放送。
フジテレビも夏の恒例番組『FNSうたの夏まつり』に今年はデビュー50周年の森山良子、45周年の谷村新司、生誕80年の加山雄三、そしてフジテレビの音楽番組で歌うのは実に30年ぶりというデビュー50周年の萩原健一まで登場させるなど力が入っている。歌番組の「長時間」「生放送」は、今や珍しくないのだ。
冒頭に書いた『人生、歌がある』も、5時間の生放送の中で、司会の五木ひろしはじめ、伍代夏子、坂本冬美、八代亜紀、瀬川瑛子、宮路オサム、研ナオコらベテランから、正直、Who are you?と言いたくなる謎の歌い手もたくさん出ていたが、面白さは満載だった。
ヨーロッパのスカーフみたいな派手柄振袖の島津悦子が持ち歌『焼酎天国』をくるくる回りながらお陽気に歌えば、スタジオの席にいた角川博も思わず立ち上がって踊り出す。血色のいい唇が悩ましい王子様系の竹島宏が身もだえするように思いを込めて『禁じられた想い』を歌い上げる。ピンクと黄色いバラの振袖というこれまた奇抜な衣装の岩本公水がマイクに白いハンケチを巻いて思いっきりストレートな歌詞が炸裂する楽曲『演歌はいいね』で盛り上げる。