さまざまな調査結果から、日本の若者が外出をあまりせず、出不精になっていることがわかった。いわば「若者の外出離れ」ともいうべき状況だが、その結果を「実に憂うべき」と指摘する経営コンサルタントの大前研一氏が、世界に出て行くことがビジネスにとってもいかに有用か、若者たちの内向き思考を反転させるにはどんなロールモデルが必要なのかについて考えた。
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観光庁の調査(2015年)によると、20代の男性は約半数が1年間に1回も旅行に行っていないなど、旅行頻度が非常に低い。20代のパスポート取得率(新規)も5.9%にすぎない。ただし、18~29歳の若者が国内旅行に行かない理由のトップは「お金がないから」である。
いくら年配者が若者たちに「アンビションが足りない」「もっと世界に雄飛せよ」と苦言を呈したところで、彼らに言わせれば「先立つものがなければ無理」となるのだろう。
ことほどさように日本は世代によって世界観が大きく異なるわけだが、それは、個々人の性格や志向ではなく、国全体の産業や企業の勢いともつながっていると思う。
たとえば、トヨタ自動車がパブリカやクラウンを欧米に輸出し始めたのは1960年代である。700ccのパブリカは、スピードが遅くてハイウェイに入れないと言われたが、それでもトヨタは自分たちの車がアメリカで売れるようにならなければ未来はないと考え、必死に努力を続けた。
同じように本田技研工業はオートバイのマン島レース(1959年)や自動車のF1(1964年~)に、ヤマハはオートバイのカタリナGP(1958年)に挑戦した。欧米に追いつき追い越せで、無謀とも思える高い目標に向かって果敢にチャレンジしたのである。