年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? まんが原作者の大塚英志氏は、「『保守』とは何か」を読み解く本として、『MUJIBOOKS 人と物 花森安治』(花森安治・著/良品計画/500円+税)を推す。大塚氏が同書を解説する。
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戦時下、翼賛会の主導の下、「翼賛一家」なる長谷川町子ら複数の作家が同一の町内・家族のキャラクターをシェアして描くまんががあった。ナチスドイツの近隣組織を模倣した隣組のプロパガンダのためのものだ。
資料に当たっていくと頻出するのが「日常」ということばで、実は戦後の新聞4コマまんがに於ける、ほのぼのとした町内や家族という「日常」は、実はこの時「作られた」ものだ。
この「日常」は町内の外、つまりは歴史や現実から乖離した世界であり、小津安二郎の映画も含め戦時下に「日常」の再構築がされたことは今一度、注意しておいた方がいい。すると、無印良品がミニマリズム的文脈で小津や花森安治のエッセイの断片を生活雑貨と並べて売っていることに、ふと店頭で感じた違和の意味も多少、見えてくる。
戦後は反戦の人に転じた花森が、戦時下、翼賛会で活動したことは知られるが、翼賛会が進めていったのは「日常」、つまり「暮らし」の再構築だ。花森選の標語「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」などは戦時下のミニマリズムを象徴しているといえる。