貴乃花親方の理事解任提案を巡って日本相撲協会は揺れに揺れている。事は貴乃花親方1人の問題ではなく、角界を構築してきたシステムそのものの存続にかかわる事態に発展しつつあるからだ。
その状況を図解で詳細に伝えた、『週刊ポスト』(1月1日・5日合併号)掲載の「角界100人相関図」は、角界関係者の間で回し読みされるほど注目されている。
現在の角界は「一門」という6つのグループで構成される。出羽海一門、二所ノ関一門、時津風一門、伊勢ヶ濱一門、高砂一門、そして2014年に正式に一門として認められた貴乃花一門である。一門内には複数の相撲部屋が存在し、それぞれに親方がいる。かつては一門単位で巡業をしていたことから一門内の力士同士の対戦が組まれなかった時代があり、現在も相撲協会から配分される助成金は一門ごとに配られ、各一門が所属する部屋に配分する流れだ。つまり、一門制度は角界の「統制システム」といえるのである。
一門は自民党の「派閥」に似ている。自民党内には二階派、麻生派などの派閥があり、所属人数や発言力によって自民党という組織の体制や方向性が決まっていく。また、派閥の領袖(ボス)である二階俊博氏や麻生太郎氏らの大物政治家は、自派閥の議員が大臣などの主要ポストに就けるよう党に働きかける。「餅代」と呼ばれる活動資金を配分する際も派閥単位。自民党内の利害調整機能を果たしている点で、まさに角界の一門と同じだ。
だが、角界と政界で決定的に違うのは、一門の名称と親方の名称の「格」が必ずしも一致しないことだ。たとえば高砂一門には高砂親方(元大関・朝潮)が所属しているが、一門の事実上のトップは現理事長である八角親方(元横綱・北勝海)である。つまり一門の「領袖」の名前を冠しているわけではない。その点が一門制を分かりにくくする原因の一つになっている。