年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? 国際日本文化研究センター教授の井上章一氏は、現代史を読み解く本として、『秘密解除 ロッキード事件 田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(奥山俊宏・著/岩波書店/1900円+税)を勧める。井上氏が同書を解説する。
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いわゆるロッキード事件は、今から40年ほど前に、世間をさわがせた。時の総理であった田中角栄は、事件への関与がうたがわれ、逮捕されている。50歳代以上のかたなら、たいていそのなりゆきをおぼえているだろう。
そして、どうやらあの事件も、歴史の対象となりだしているようである。40年の時がたったことだけで、そう言っているわけではない。アメリカの文書館が、当時の非公開記録を、あかるみにだしはじめた。秘密扱いの指定を解除し、公開にふみきっている。
おかげで、同時代にはわからなかったことなどが、くっきり見えてくるようになった。ありがたいことである。しかし、ここまでくるのに40年かかるのかと、いやおうなく考えこまされた。
角栄のやりかたは、アメリカにきらわれた。それで、怒りを買い、司直の手におちたのだと言う人は、少なくない。しかし、アメリカの誰がどう角栄をいやがったのか。その詳細を、具体的にあげてくれる書き手は、ながらくいなかった。