年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? ノンフィクションライターの与那原恵氏は、「多様化する『家族』」を理解する本として、『国家がなぜ家族に干渉するのか 法案・政策の背後にあるもの』(本田由紀、伊藤公雄・編著/青弓社/1600円+税)を推す。与那原氏が同書について解説する。
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日本の「家族」のかたちが変わりつつある。少子化が社会問題となってからすでに久しいが、その要因は晩婚化ではなく、未婚化であることが明確になっている。生涯未婚率(五十歳の時点で結婚経験がない人の割合)は、男性で二三・三七%、女性で一四・〇六%(二〇一五年国勢調査)だ。
かくいう私もその一人だが、家族を持たずに生きていくことに、ことさら不幸を感じてはいない。血縁はなくとも、いざというときに助け合うゆるやかな関係を築くことができた。また、友人の子どもの成長を見守る一員にも加えてもらい、子どもたちが生きやすい日本社会を願っている。
離婚する知人もいるけれど、その後の生き方は母子・父子家庭、婚姻関係を持たないパートナーとの暮らしなど、多彩だ。家族とは固定的ではなく、変容するものであり、多様な家族のかたち、また生涯独身も多数だという前提で、国は施策を立てていくべきだ。
ところが安倍晋三内閣は「家族」にかかわる法律案や施策の現実化に向けての動きを加速させているのである。家庭教育支援法案や親子断絶防止法案。また自民党の憲法改正草案では、二十四条(家庭生活における個人の尊厳と、両性の本質的平等)の改正もめざしている。さらには内閣府の「婚活」支援なども活発化している。
このような政府の動きの目的は、伝統的家族主義の復活といわざるを得ないし、その背景には安倍を取り巻く人脈の意向、さらには経済政策とも連動している。