さいたま市大宮区で17日に発生した風俗店での火災は、死者5人がでる惨事だったというだけでなく、昭和40年代に建てられた建物であり、防火設備が現行法の規定を満たしていなかった疑いのあることが波紋を広げている。同程度の築年数で防火設備に難のある建物は全国の歓楽街にある。風俗関係者への取材を多くしてきたライターの宮添優氏が、同業者の声を聞いた。
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「ついに恐れていたことが起きた、という感じ。うちの店舗も築40年を超えていて、あちこち傷んでいる。少しの地震でもすごく揺れるし、店の女の子たちもニュースを見て怖がっています」
千葉県内にある特殊浴場、いわゆる「ソープランド」と呼ばれる風俗店で店長を務めるX氏は、先日埼玉県さいたま市で発生したソープランド火災のニュースを見て「明日は我が身」だと痛感した。
四人もの死者を出した大規模火災は、埼玉県下随一の乗降客量を誇るJR大宮駅からほど近い歓楽街にある、築40年オーバーというソープランドで起きた。店の従業員だった女性三人と客とみられる男性の一人、計四人が死亡し、テレビニュースは連日トップで火災の原因などについて報じた。
報道を見ていると、建物の老朽化が進んでいたことや火の不始末、また非常階段が取り外されていたのではないかということ、さらに消防法を無視した内装になっていたのではないか、などと議論が交わされ、特に「店側の安全対策に不備はなかったのか」という部分に焦点が当てられていた。前述のX氏は、これらの報道を見て憤りを隠さない。
「店がボロい、法律を守っていない、ということだけ責めるのは違うんではないでしょうか? 法律は建物が出来て以降に制定されたものだし、店を建て替えたくても、それができない”理由”があることを、どこも報じてはいません」
1998年に風営法が改正され、店舗型の風俗店は実質的に「新規出店」出来なくなってしまった。派遣型の「ファッションヘルス」店が激増したのもこの影響によるものであり、ソープランドに至っては、法改正以前からある店舗しか営業できていないという現状だ。建物を建て替えたり、場所を変えて営業しようと届出を出しても、その許可が下りることはほぼない。「仕方なしに」既存の店舗、営業形態でやっていくしかないという。