同じ出来事であっても、どの「立ち位置」から報じるかによって、読者の印象はガラリと変わる。貴乃花親方を巡る報道合戦はまさにその典型だ。
現在発売中の『週刊ポスト』(1月1日・5日合併号)に掲載された「角界100人相関図」では、一連の日馬富士暴行問題の「キープレーヤー」としてスポーツ紙の存在を挙げている。実際、10月26日に起きた日馬富士による貴ノ岩への暴行事件を最初に報じたのは11月14日付けのスポーツニッポンだった。スポニチは貴乃花親方が長く専属評論家を務め、現在の専属は貴乃花親方に近い玉ノ井親方(元大関・栃東)だ。そうしたこともあって、「貴乃花親方の許可を得たうえで、周辺から最も信頼しているスポーツ紙にリークされたとしか思えない」というのが協会関係者の共通した見方だ。
その後、12月28日の貴乃花親方の理事解任提案まで、一連の事件はスポーツ紙で連日のようにトップ記事として扱われた。しかし、各紙によって立ち位置が全く違う。相撲担当記者のコラムや署名記事でも「親貴乃花」「反貴乃花」が明確に分かれた。
「親貴乃花」は暴行事件をスクープしたスポニチで、事件発覚後も貴乃花親方の肉声を報じ続けている。日馬富士の引退会見の翌日の11月30日付紙面では、「親睦というなら、土俵の上で力いっぱい正々堂々と相撲を取ることが親睦ではないのか」という持論を「初肉声」として掲載した。象徴的だったのは、貴乃花親方の処分が議題になった臨時理事会(12月28日)当日の紙面だった。各紙が「降格」や「業務停止」と大見出しで処分内容を予測したのに対し、スポニチだけは「黙して待つ」の見出しで、「正当性を主張する貴乃花親方」からの視点を維持し、当日の処分の見通しにはノータッチだった。
対する「反貴乃花」の急先鋒はスポーツ報知とサンケイスポーツだ。