年金は何歳から受け取るべきか──内閣府の検討会などで、受給開始を「75歳」まで選べる制度の導入が提言されている。「少しずつでも『長く』受け取る」か「期間は短くても『たくさん』受け取る」か。これは「どちらが正しいのか?」という二者択一の単純な判断ではない。「年金博士」こと社会保険労務士・北村庄吾氏はこういう。
「定年退職後の人生において、『お金』はもちろん重要ですが、心身の健康、そしてどんなことに時間を費やしたいか、といった要素も大切になってきます。体が比較的よく動く60代のうちにしかできない目標があるのか、70代まで長く続けられる趣味を持っているのか。そうしたことも踏まえて初めて、60歳以降の『どの時期』にお金が必要かというシミュレーションが可能になってくる」
つまり、「繰り上げ」「繰り下げ」の判断は、夫婦の趣味、定年後の楽しみや生きがいをどこに見出すかによっても変わってくるのだ。
「繰り上げ」「繰り下げ」は、“子供や孫との関係”も踏まえた判断が必要になってくる場合もある。前出・北村氏はこういう。
「親子関係が良好なら、リタイア後の『同居』はメリットが大きい。最大の利点は、『子供の扶養に入る』という選択肢が生まれることです。扶養に入ることができれば、子供の保険料負担を増やすことなく、親も健康保険に加入できる。
また、高額療養費の世帯合算が可能になり、医療費の自己負担を抑えやすくなります。さらに、同居する親が亡くなった場合、子供は最大2か月分の未支給年金を受け取れる」