2年半後に迫った東京五輪を見据えて、インバウンド需要を狙ったホテル建設ラッシュが続いている。特に火花を散らしているのが、日本一の商業地、銀座である。
2018年、開業の先陣を切るのが銀座朝日ビル跡地に建つ、外資のハイアット系ホテル。次いで、ニュートーキョー跡地(場所は有楽町エリア)ではディベロッパーのヒューリックが自主運営する高級ビジネスホテル。
そして2019年春、旧プランタン銀座裏手の読売新聞社所有跡地に建設中なのが無印良品(運営は良品計画)が手がける「MUJIホテル」(ホテル運営は小田急電鉄グループの企業)だ。翌2020年も、森トラストが誘致するマリオット系の最高級ブランド、エディションホテルが控えている。
この中である意味、無印良品のホテルは最も注目度が高いといっていい。ホテル展開に慣れた外資系やディベロッパー系の案件でなく、小売業系のホテルであるからだ(「MUJIホテル」そのものは2018年1月18日に深センで、同3月20日には北京でと、中国での開業が日本よりも先行)。
過去、ダイエーが福岡市でシーホークホテル、神戸市でオリエンタルホテルを、旧セゾングループがホテル西洋銀座、そしてインターコンチネンタルホテル買収などでホテル事業に進出したが、いずれも後に売却、譲渡する結果になっている。
無印良品といえば、鉛筆1本、スプーン1本から食品、雑貨、衣料品、家具、別会社では住宅事業も手がける企業。そして商品はすべてシンプルなデザインでナチュラル、ウッディ、色調も原色は極力使わず、生成りやモノトーンの配色で統一している。それだけに、この世界観に共鳴、共感するファンは俗に“ムジラー”とも称され、無印良品の商品群に囲まれて生活することに満たされているようだ。
運営会社の良品計画側も、「これがいい、ではなく、これでいい」を商品コンセプトとし、地球との共生に強いこだわりを持ちながら、無駄を削ぎ落したシンプルな生活提案をし続けるというのが変わらぬ哲学で、暮らし方の提案そのものが無印良品だという点が、他社には真似のできない世界観だとしている。つまり、企業コンセプト自体を商品に落とし込んで売る会社ともいえるわけで、ここが他の小売業とは決定的に違うといっていい。
ホテルにおける知見やノウハウで、ダイエーや旧セゾングループと違うのは、前述したように、グループ会社で住宅事業を手がけてきたことも活きてくるからだ。