平昌オリンピック開催まで約1か月。大会の主役は当然「選手」だが、その選手達、そして大会をサポートするのが大会そのものや各国代表のスポンサー企業である。我々はそれらの企業のロゴを日常的に目にし、当たり前の存在として扱いがちだが果たしてどうすればスポンサーになることができるのか。また、いかに彼らは大会にかかわるのか。「今回の全スポンサーで私達がもっとも会社の歴史が短く、売り上げ規模も小さいでしょう」と語る寝具メーカー・エアウィーヴ(2004年創業)の高岡本州会長兼社長に話を聞いた。
五輪のワールドワイドパートナーはコカ・コーラ、トヨタ、VISAなど13社。JOC(日本オリンピック委員会)のゴールドパートナーはアサヒビール、キヤノン、NTTなど15社、そしてエアウィーヴは29社ある東京2020オリンピックオフィシャルパートナーのうちの1社である。
――エアウィーヴといえば、浅田真央さんや錦織圭選手、今回の五輪では高梨沙羅選手と小平奈緒選手と契約していて「アスリート」のイメージがあるのですが、なぜ、スポーツとのかかわりを持っているのですか?
高岡:寝具は寝るためのものであり、それは翌日“良い状態”になるためのものでもあります。もっとも“良い状態”になりたいと願う人に寝具を作りたい。そこがスタートです。そういう特定の日に、もっとも“良い状態”になりたい、と思う人は誰だろう――。こんな観点から考えるとそこに当てはまるのは五輪選手でしょう。五輪の決勝の前の日、「この寝具がなくては困る」と思われる商品を作りたいと思ったのですね。
サポートする候補としては、野球選手もいましたが、やはり五輪ってものが一番だろうと思いました。4年に1回しかなく、人生でも多くとも2回か3回しか参加するチャンスはない。場合によっては1回しかありませんが、それに合わせて体調コントロールしている人向けに作れば、万人にとって良いものになるのでは、と思いました。当社のマットレスは高反発で寝返りが打ちやすく、寝入り後の体温が低反発のマットレスと比べてスムーズに下がるのが特長です。寝返りがラクで睡眠時に体温が下がるということはいい睡眠の条件で、これが翌日のパフォーマンスに大いに影響するんですよ。
実際に競技団体とのかかわりでいえば、北京五輪前の2007年にマットレスは作り始めたのですが、水泳の古橋廣之進さんの紹介で国立スポーツ科学センターにサンプルで入れました。その時は半分の施設には入れて、半分の施設は入れませんでした。そして、選手に両方試していただいた後にアンケートを取りパフォーマンスがどう変わるかを彼らに気付いてもらえるような商品を作ろうとしたのです。
普通の五輪関連の商品って来場者や報道陣から見えるんですよ。会場に置いてあったり自販機があったりして。でも、寝具ってプライベートな空間にあるから見えないんですよね。それを“見える化”するために、わざと目立つロールアップ型の寝具を作り、運べるようにしたのです。水泳の北島康介さん(同大会で金2個・銅1個獲得)が北京に持って行ってくれたんですよ。ただし、この時は北島さんとも契約していないし、五輪とも契約していません。「いつかは……」という思いでいました。