新築マンション市場で今、静かな変化が起きている。「完成在庫」が溜まってきているのだ。いわゆる売れ残りは値引き購入のチャンスといえるが、「デベロッパーの常套句を鵜呑みにしてはいけない」と指摘するのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
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通常、新築マンションの販売は建物が完成する1年~1年半前から始まる。一部のデベロッパーを除いた各社では、建物が完成する時点ですべての住戸の購入契約が締結されることが理想とされている。
しかし最近、目標通りに販売活動を終える物件が少なくなってきている。建物が竣工した後も販売活動が続いている物件を「完成在庫」と呼ぶ。
新築マンションの開発事業を行う場合、デベロッパーは土地の購入費や建物の建築費を支払う資金を銀行からの融資で賄うケースがほとんど。この融資は、マンションの売却が成立して引き渡しが行われた時点で、購入者から支払われる販売代金で返済される。
売買契約が成立せず、販売代金が入ってこない場合は融資を返済できない。その場合は金利を支払い続けることになる。デベロッパーにとっては予定外の出費だ。したがって、ほとんどのデベロッパーが建物が完成するまでにすべての住戸の売買契約を終えようとするのだ。
ところがここ数年、新築マンションの価格は目に見えて高騰してしまった。特に東京の都心やその周辺、大阪市や京都市の一部では驚くほど価格が上がっている。
一方、マンションを購入する側の個人所得にはほとんど変化がない。それどころか、消費税や各種公共料金などが上昇した結果、統計的に見た個人の可処分所得は減少気味だ。唯一、住宅ローンの金利は過去最低水準だが、年収の7倍から8倍の融資を受けるというリスクを取る人はさほど多くない。
その結果、価格が上昇した新築マンションの多くが完成在庫となってしまった。
今、東京の都心や城南エリア、首都圏の郊外、大阪市や京都市の一部では新築マンションの完成在庫がジワジワと増加している。そして、多くのデベロッパーは3月末に決算を迎える。完成在庫は1戸でも多く減らしたい。そうなると、何が起こるのか?