1月3日、『消えた天才~一流アスリートが勝てなかった人 大追跡~』(TBS系)が放送され、桐生祥秀や髙橋大輔、福原愛など一線で活躍するスポーツ選手が勝負の世界で苦しめられた天才の今を追った。その中で、松井秀喜が巨人に入団した1992年のドラフトでヤクルトに1位指名された伊藤智仁も特集された。『わずか2ヶ月半で消えた! プロ野球史上最高の天才』というテロップとともに、コーナーが始まった。だが、そこに違和感を覚えた視聴者も少なくなかったという。野球担当記者が話す。
「伊藤智仁は1年目の7月4日の巨人戦を最後にケガで離脱するまで14試合に登板し、5完投、4完封で防御率0.91と驚異的な成績を誇りました。しかし、この番組のVTRの作り方には疑問が残りました。まず、『当時、強力打線を誇ったジャイアンツ相手に三振の山を築き、ルーキーにして1試合16奪三振のセ・リーグ記録を樹立』というナレーションとともに、1993年6月9日の巨人戦の映像が流れました。これは伊藤智仁の凄さを象徴する試合ですが、この年の巨人は貧打に泣かされ、チーム打率は両リーグ最低の2割3分8厘。少なくとも、『強力打線を誇ったジャイアンツ』という表現は誤りです」
ナレーターが「伊藤の天才たる所以。それが……」と言った後、神宮球場の巨人戦の映像を見せ、「バッターの手元で鋭く曲がる切れ味抜群のスライダー」とつけ加えた場面でも気になる点があったという。
「この映像はスコアや打者の井上真二から推測するに、おそらく1997年5月23日の試合です。つまり、コーナーのタイトルで『わずか2ヶ月半で消えた!』と銘打ち、1993年の文脈でVTRを進めているにも関わらず、4年後の1997年の映像を使っている。YouTubeで伊藤智仁を検索すると、この時の動画が上位に来るので、これを参考にしたのかもしれません。
TBS内には野球の映像なんて大量にあるはずですし、ヤクルト戦の中継映像を当時のまま使いたいなら、フジテレビにもっと細かく要求すればいい。要するに、資料探しに汗をかいた跡が全く見られません。これを正月のゴールデン帯で放送していいのかと……」(同前)