厚生労働省の発表によると日本の初任給は院卒者が23万3400円、大卒が20万6100円なのに対し、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が日本で大学卒のエンジニアを「初任給40万円」で募集して大きな話題になった。経営コンサルタントの大前研一氏が、エンジニアを冷遇し、日本的な平等主義で社員全体の報酬を抑える経営者の怠慢とエゴを批判する。
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私がファーウェイを訪れた時に印象的だったのは、社内の掲示板に「北国の春」と題した任正非CEOの檄文が貼り出されていたことである。
日本を他山の石とせよとの主旨の檄文には概略、次のようなことが書かれていた。自分(任氏)は大好きな日本の歌謡曲『北国の春』を歌った千昌夫の故郷・東北地方を旅したが、かつてあれほど繁栄していた日本は見る影もなく衰退していた。我々は日本の失敗に学び、同じ轍を踏まないようにしなければならない──。
かつての日本は優秀なエンジニアを輩出し、最先端技術で世界をリードしてきた。しかし、日本企業のエンジニアに対する報酬は、あまりにも低い。
たとえば、東芝でフラッシュメモリを発明した舛岡富士雄氏への報奨金は、わずか「数万円」だったという。舛岡氏は、発明者が本来受け取るべき対価として10億円の支払いを求める訴訟を起こした(8700万円で和解)。また、日亜化学工業で青色LEDを発明した中村修二氏も、発明対価として200億円を請求した(8億4000万円で和解)。