全国の鉄道ファンが一度は必ず抱く夢が「鉄道会社に就職すること」。子供の時から鉄道に親しみ、鉄道とともに育ってきたような熱心な鉄道ファンは「鉄道会社に就職しようとしても敬遠される」というのがファンの間では定説だが、京王電鉄に勤める細矢和彦さん(53)は、日本のみならず海外にまで足を運んで鉄道の写真を撮影してきた“撮り鉄”だ。生家が京浜東北線・赤羽駅近くの線路沿いにあるという細矢さん。撮り鉄デビューはいつだったのか?
「小学4年生ぐらいから父親のカメラで電車の写真を撮るようになりました。きっかけは、自宅の前を走っている京浜東北線の103系という電車に冷房車がデビューしたこと。それがすごくカッコよかったので撮りたくて、南浦和にある電車の車両基地まで行きました。『すいませ~ん、写真撮らせて下さい』って、小学4年生の小僧が交渉しまして。当時の国鉄の人は『いいよ。撮らせてあげる』と入れてくれて、とても良くしてくれたんです。
小学5年生の時には東北線を走っていたEF57という電気機関車がカッコよくて、これを撮りたくなった。その頃はだんだん数が減っている時期で、運用を調べないと撮れなかったんです。それを調べるために『運用を教えてください』って宇都宮の運転所まで行ったりしました」(細矢さん。以下同)
幼い頃から無類の行動力を発揮していた細矢さん。学生時代から鉄道会社でアルバイトし、京王電鉄に入社したのは1987年4月のことだった。その情熱は大人になってますます盛んになり、撮る対象はさまざまなジャンルに広がっている。最近も特別な1枚の撮影に成功したという。
「昨年の11月、ルクセンブルク大公が来日した時にお召し列車が走った時は、JRの職員が線路に出て車両に旗を付ける瞬間を撮ることができました。お召し列車に旗を付ける時は敬礼することを以前の撮影の時に見ていたので、その瞬間を撮りたかったのです。
そしてその後、陛下がお召し列車に乗られた所も撮りたいわけですが、陛下がお乗りになる所は報道陣で一杯になってしまうので撮れない。だから発車して少し走り始めた地点で撮れそうな場所からシャッターを切りました」