役者だけでなく演目も時代とともに大きな変化を見せている歌舞伎。『スーパー歌舞伎II「ワンピース」』に代表される新作歌舞伎が今後も目白押しだ。
今年8月からは、新橋演舞場で坂東巳之助(28才)と中村隼人(24才)が主演を務める『NARUTO』が上演。これも人気漫画を原作とした新作歌舞伎である。
数ある新作歌舞伎のなかでも特に新たな可能性を示したのが澤村國矢(39才)だ。2016年4月に開かれた『ニコニコ超会議』で獅童、バーチャルアイドル・初音ミクとともに新作歌舞伎『今昔饗宴千本桜』を上演して大好評を得た。『恋する歌舞伎』などの連載を持つ歌舞伎ライターの関亜弓さんが解説する。
「國矢さんは、『ニコニコ超会議』 に出演したことによって、 普段は歌舞伎を一切見ないネット民から『紀伊国屋!』と屋号も覚えられ、注目されたようです。こういうかたちで実力のある役者さんの知名度が上がるなんて 、本当に新しい時代になったと感じます」(関さん)
ほかにも新・幸四郎がフィギュアスケートの荒川静香や高橋大輔とコラボした公演『氷艶hyoen2017~破沙羅~』をプロデュースするなど、人気俳優による新規開拓が続く。
その第一人者である市川猿之助(42才)に話を聞いた。
「歌舞伎役者がやれることなら、何でも歌舞伎の新たな可能性につながっていくと思います。好奇心旺盛に日々を過ごして、これからも誰も思いつかないような作品を生み出したいですね」
だがこうした試みは若いファンの獲得につながる一方、一部から異論も上がる。歌舞伎界の重鎮・中村吉右衛門もその1人である。2016年のあるインタビューで「若い人は新しいものを追うばかりでなく、古典をやらないと」と注文をつけている。
古参の歌舞伎ファン(70代主婦)もつぶやく。
「『ワンピース』を観劇したけど、普段見ている古典と比べると、どうしても軽い感じがしてしまって…。私はあの世界には入り込めませんでした。やっぱり古典芸能である以上、昔ながらの技で胸にじんとくるような迫力ある芝居も見たい。またお客さんも若い人が多く、歌舞伎ならではの品のあるお客さんが少ないことにも違和感を覚えました」