角界を揺るがす権力闘争の最中に発覚した立行司・式守伊之助(58)のセクハラ問題で白日の下に晒されたのは、世間の常識とはかけ離れた「角界の奇妙な慣習」の数々だった。
「飲むと正気を失うことがあった。申し訳ありませんでした」
セクハラ問題の発覚翌日、報道陣にそうコメントして頭を下げたのは宮城野親方(元前頭・竹葉山)だった。式守伊之助は宮城野部屋の所属なので、師匠である親方が謝罪したわけだ。しかし──。
一般的なスポーツに当てはめるなら、力士は“選手”で、行司は“審判”である。両者が同じ“チーム(部屋)”に所属しているのは、いかにも奇妙だ。しかも、同部屋の力士は取組がないのに対し、力士と行司の場合は同部屋の組み合わせが許される。立行司である式守伊之助は、同じ宮城野部屋の“同僚”である横綱・白鵬の取組を何度となく裁いている。
◆初任給は「1万4000円」
「行司の定員は45人で、全員がどこかの部屋に所属します。かつては巡業を一門単位で行なっていたので、部屋に行司が所属する意味があった。協会が巡業を一括管理するようになった時(1957年)に、“判定の公平を期すため”という理由で行司だけの『行司部屋』が立ち上げられたこともありました。ただ、この“部屋”には人気力士がいないのでタニマチが集まらず、再び各部屋所属になった経緯がある」(協会関係者)