6月に開催されるサッカーW杯ロシア大会。日本代表が6度目の出場となるなか、これまで10回にわたってW杯を現地取材してきた大ベテランのサッカージャーナリストがいる。賀川浩氏、93歳。“現役最高齢サッカー記者”として世界的に知られ、2015年には日本人として初めてFIFA会長賞を受賞した。賀川氏がW杯取材を始めた頃、日本でのサッカーの注目度は、今と比べものにならないほど低かった。
「1974年の西ドイツ大会当時、私はサンケイスポーツの編集局次長でしたが、現地取材の経費はすべて自腹。100万円くらいかかりましたよ。ただ、初めて生でW杯を見て、『世の中にこんな面白いものがあるのか』と改めて感じたことを今でもよく覚えています」(以下、カギカッコ内はすべて賀川氏)
1974年W杯では、ヨハン・クライフを擁するオランダが全員攻撃・全員守備のトータルフットボールで快進撃を見せた。“皇帝”ベッケンバウアー率いる西ドイツとの決勝戦は、今でもW杯史上最高の名勝負といわれる。
「オランダの戦術の斬新さばかりが強調されていますが、むしろ決勝で印象に残ったのは地元・西ドイツの戦いぶりでした。オランダの戦術を大会期間中に研究し尽くして、決勝では西ドイツも非常にコンパクトなサッカーを展開。オランダを見事に下した。W杯という大会のレベルの高さに驚きを禁じ得ませんでした。
ただ、近年のW杯は1974年大会のように“本命が下馬評通り勝ち上がる”という展開になりにくくなっています。その意味では、ロシア大会は日本代表にも大きなチャンスがある」
W杯の出場国数は1974年当時(16か国)から倍増したが、“超強豪国”でなくとも勝ち上がるチャンスは、むしろ増えたというのだ。