今やカメラはデジタルが主流になってしまったが、「デジタルは使いにくい」と笹本さんは話す。
「たしかに簡単だけれども、何でも写ってしまうので好きではありません。進化したことでちょっとつまんなくなってしまった。やはり自分の頭で考えて、ピントや構図、それに色彩を工夫しないと。
この歳ですから、いつどこかでつまずいてそのまま死んでしまうかもしれませんし、それは仕方のないこと。だから生きている間は、できることをして生きて、恥ずかしくないものを残していきたいと思っています」
現在は老人ホームに住みながら写真家を続けている。
「室生犀星ら著名人に私の撮った花を結びつけた『著名人と花にまつわる想い出』という本をつくるために、花を撮ったり、過去に撮りためたものを整理したりしています。昔のように身近に花があまり咲いていないので、撮影には困りましたけど。今年中には本としてまとめるつもりです」
写真家としての80年間の集大成となりそうだ。
※週刊ポスト2018年1月26日号