「人生100年時代」とは、単にその年齢まで命を永らえさせることではない。大事なのは、100歳まで、そして100歳を超えたその後をどう生きるかだ。
独自の色彩感覚でシルクロードを描き続けてきた洋画家の入江一子さん(101)。100号(全長1.6メートル)の大作『回想・四姑娘山の青いケシ』に挑む姿を追ったNHK『日曜美術館』(2017年6月18日放送)も大きな反響を呼んだ。
自身の作品を展示した杉並区の「入江一子シルクロード記念館」をアトリエとして使っている。
「『青いケシ』を描くのに2か月以上かかりました。大きな絵を描く時は背の高さが足りないので苦労します。
一度、脚立から落ちましてね。無事でよかったんですが、以後は気をつけています。年齢で技術的に衰えるということはありません。残念なのは体力ですが、それは気力でカバーします。それに絵を描けば描くほどかえって元気になっていく気がします」
入江さんがシルクロードを描き始めたのは1969年のことだ。
「最初は日本の風景を描いていて、次に日本の石仏に興味を持ちました。それから台湾に行くチャンスがあって、日本では観られないようなカラフルな石像に興味を持ちました。それが高じて、戦後、まだ日本人が誰も行かないような時に中国の大同(雲崗石窟)や敦煌(莫高窟)に旅しました。
印象的だったのはイスタンブールで、朝起きたら窓が火事かと思うくらい真っ赤な景色を見たことです。朝日で赤く染まったボスポラス海峡を夢中になって描きました。シルクロードを彩る光と花、カラフルな民族衣装が好きです」