2年に一度の日本相撲協会理事選が近づき、1票をめぐる争いが激しくなっている。票を投じることができるのは、相撲協会の年寄株を持つ親方たち。理事選の1票を作り出すために、ベテラン力士が引退して空き株を襲名する“慣習”がある。さらにここにきて、借株の“返上”を求められる騒ぎまで起きている。
現在、年寄株の売買は表向き禁じられている。しかし実態としては、退職した元年寄などが所有権を持ったまま、後継者から指導料などの名目で“家賃(名跡使用料)”を受け取っている。実際に名乗っている親方と、所有者が異なる年寄株を『借株』と呼ぶ。借株の親方の場合、理事選の投票は株の持ち主の意向が強く反映すると言われる。
1月6日付のスポーツ報知は、阿武松部屋の元前頭・大道が借株で継承した「小野川」が、所有者に返上を求められていると報じた。「小野川」はもともと故・北の湖前理事長(出羽の海一門)の所有であったが、前回の理事長選(2016年2月)のときに阿武松部屋(貴乃花一門)の大道が初場所後に引退して襲名していた。
「現在、所有権は北の湖親方の遺族にあるとされ、前理事長の後援者を含め、『小野川』を幕下3枚目の北太樹に継がせたい意向が根強くあったといいます」(後援会関係者)
そして初場所初日の前日である1月13日、協会は北太樹の現役引退と年寄「小野川」襲名を理事会で承認したと発表。これによって貴乃花一門である阿武松部屋から「1票」が奪われたわけだ。