スポーツ

白鵬と稀勢の里 黒星相撲に見る両横綱の対照的な心理

 だが、それも一瞬のこと。礼をすると、口を尖らして思い切り息を吐き、花道でも下唇を強く噛んだ。歯痒さといら立ちが大きいのだろうか。そして足を軽くひきずりながら、苦々しそうに顔をしかめ、鼻と眉間にシワを寄せた。その表情には、思うようにいかない怒りだけでなく、悲しみや恥への嫌悪感など、複雑な感情が入り混じっていたようだ。マイナス感情をあえて表に出すことで、自分の心にそんな感情が積み重ならないようにしていると思われる。

 一方、稀勢の里はマイナス感情やストレスが表情や仕草に出にくく、内側に抑え、ため込みやすいタイプだ。そんな“おしん”のような耐える性格が、力士として愛される所以でもあるが、黒星が続くと、抑え込んだマイナス感情が膨らみ、気持ちに余裕がなくなってしまう。

 4日目には大関琴奨菊に突き落としで金星を配し、土俵に転がった。起き上がると土俵際で右膝を立て、土俵に左手をつき、しばしうなだれた。そこには悔しさというより、失意と情けなさが透けて見える。土俵を下りてからも、一点を見つめたままだ。頭の中で今の取り組みを思い返し、「なぜだ? どこがいけない?」と自問しては堂々巡りになっているように見える。思いつめると、ますます動きがなくなり、無表情になっていくようだ。。

 それでも5日目の早朝稽古の後は「最後までやり抜く」とでコメントした稀勢の里。取り組みでは嘉風に押し倒され、土俵下に転落してしまった。視線を上げることなく礼をすると土俵を下りた。自分自身の相撲に自信がもてなくなったのだろう。横綱らしい相撲を取れない、見せられないという思いが強いのか、まっすぐに前を見ない。そのまま稀勢の里は、顔を上げてはいるものの視線を落とし、無表情で花道を戻っていった。視線の動きだけでなく、表情がないことで、かえって精神的な辛さを想像させてしまうのだ。

 立ち合いに迷いがあると言われた白鵬、そして休場続きで相撲の勘が戻っていないと言われた稀勢の里。それぞれの心中はおもんばかるしかないが、なんとも重たい空気がたちこめる角界だけに、次の場所こそ、ぜひともスカッとする相撲を見せてほしいと願うばかりだ。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン