胃の切除を最小限に抑えられる治療法を解説
胃がんは内視鏡の進歩などで、早期での発見が約7割となっている。さらに大きな原因の一つであるピロリ菌の除去が広がっており、胃がんでの死亡率は減少傾向にある。
胃がんの進行度合いは、がんがどこまで進行しているか、その深さで決まる。胃は粘膜と粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層の構造で、早期がんは粘膜か粘膜下層に留まっているものをいう。
胃がん治療の第一選択は手術である。かつては開腹で胃を部分的、あるいは全摘していたが、治療法が進化し、内視鏡や腹腔鏡を利用することで、胃を極力残す技術が導入されている。
上部消化器に対する画期的な治療法を次々開発している昭和大学江東豊洲病院消化器センターの井上晴洋センター長に話を聞いた。
「胃がんの手術は、腫瘍の発生した場所、がんの深さや大きさ、広がりなどによって異なります。治療法を選択するためには、手術前検査で胃の中のがんの広がりを正確に把握することが重要です。事前に拡大内視鏡観察を重点的に行ない、切除すべき範囲を見極め、正常な胃は極力残すようにしています」
胃の入口付近にできた、粘膜に留まっているがんは、内視鏡で対応できる。口から内視鏡を入れ、胃の中のがんが発生している粘膜部分を電気メスで剥離する方法だ。この場合、胃はそのまま残る。ただ、粘膜を剥ぎ取った場所が潰瘍になっているため、1か月ほど胃潰瘍の治療薬の服用は必要だが、治療3日後あたりで食事が摂れる。退院後は治療前と同じように飲食が可能となる。