音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、七回忌を迎えてなお存在感を増す立川談志の落語家としての素顔についてお届けする。
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落語界の風雲児、立川談志。亡くなって6年以上経つというのに、その存在感は増すばかり。毎年のように新たな発掘音源や映像作品が発売されている。七回忌を迎えた2017年秋、また新たな「談志の商品」が登場した。
まずは2枚組CD「家元の軌跡 談志32歳」(キントトレコード)。談志が自宅に保管していた音源を発掘してCD化する「家元の軌跡」シリーズはこれまで「談志30歳」「続談志30歳」が出ていたが、七回忌追善盤の第3弾は1968年8月31日に東宝名人会の余一会(31日に行なわれる特別興行)として開かれた「立川談志独演会」での高座を収録(『寝床』『宮戸川』『付き馬』及び漫談)。ネタ下ろしに備えて『小猿七之助』を自宅で稽古した録音がボーナス・トラックで入っていて、ファンにとってはライヴ音源以上に貴重なドキュメンタリーだ。
NHKからは5枚組CDボックス「立川談志落語集成1964-2004」第1集が出た。順次発売で第3集まで出るという。
談志生前に発売された音源・映像は、29歳で始めた紀伊國屋ホールでの「ひとり会」のCD全集を除けば圧倒的に50代後半以降のものが多く、躍動感あふれる40代の談志の高座を商品化したものが非常に少なかったのだが、没後数年してCD18枚組「東横落語会 立川談志」(小学館/2015年)、DVD8枚組「立川談志全集」(NHK出版/2015年)、CD14枚組「東宝名人会 立川談志大全集」(東宝ミュージック/2016年)等40代の談志の高座を豊富に収めた商品が続々と登場、ファンを喜ばせた。