音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、師匠の立川志らくから「ふざけるにもほどがあるが、ふざけないよりまし」と言われた、立川こしらの異端児ぶりについてお届けする。
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立川流きっての爆笑派、立川こしら。彼が「落語を題材に遊ぶ」ホームグラウンドが、毎月お江戸日本橋亭で開かれる独演会「こしらの集い」だ。
「集い」というだけあって普通の落語会とはだいぶ趣が異なる。たとえば2017年11月の「集い」では高座に上がると、まずはフォークリフトの免許を取りに行った体験談だけで40分間、笑わせっぱなし。常連客にとって、ある意味このトークこそ「集い」の真骨頂だ。
その日の落語は『粗忽長屋』『粗忽長屋の続き』『宮戸川(通し)』の3席。『粗忽長屋』は八五郎が女房連れで登場、この女房が八五郎に輪をかけた粗忽者という異色の設定。バカップルが主役という発想が凄い。『粗忽長屋の続き』は、その八五郎が石川五右衛門を生け捕りにするのが自分の使命と思い込んで旅に出るバカバカしい噺。たぶんこの日限りで二度とやらない(笑)。
『宮戸川』はお花と半七が男女の仲になる前半で切るのが普通で、後半は非常に陰惨、最後は○○オチに至る噺だが、こしらの意表を突いたドンデン返しの鮮やかさは落語史上に類を見ない。まさか『宮戸川』の「通し」でこんなに笑わせるとは!
12月は、こしら版『元犬』(元犬のシロが奉公に行った家の女中のおもとが元は猫だった、という改作)を演じた後、その続編として『化け猫長屋』という二部構成の長編スペクタクル落語を披露した。これは毎年恒例の「リクエスト落語」で、予めリクエストされた様々な古典の演目の要素を「落語チャンチャカチャン」のように盛り込んだ新作。これもこの日限りの遊びで、いわば常連客に対するファンサービスのようなものだ。