中国共産党の完全統制下にある中国メディアに登場する日本人識者の発言は、本人が意図しようがしまいが、「反日宣伝」に利用される恐れがある。
評論家の石平氏は、中国メディアに日本人学者が頻繁に登場する意味をこう分析する。
「中国の官製メディアは、中国共産党への求心力を高めるため、反日的な方向へ世論誘導するのが常です。そうしたメディアが単に日本を批判しても、中国人には宣伝と見られ信用されないが、そこに日本の学者が登場すると信用されやすくなるという効果がある。その効果を知ったうえで利用しているのです」
2017年2月、南京市において、中国の「南京大虐殺史と国際平和研究院」や日本の日本平和学会などが共同シンポジウムを開催した。これに参加した日本平和学会会長で憲法学が専門の君島東彦・立命館大学教授の発言を中国・南京の日刊紙「新華日報」(2017年2月24日付)が報じている(*注)。
【注/新華日報は同記事で「南京大虐殺は疑うべくもない歴史的事実」「日本の軍国主義思想はがん細胞のようなもの。しっかり取り除いておかないと」「中国を侵略した歴史について、日本政府はもっと深刻に反省しなくてはならない」などの中国人識者らの発言も報じている】
君島氏は護憲派の論客で、集団的自衛権行使容認には批判的な立場だ。
記事によると、君島氏は会議で、〈中国は近代以降、日本の軍国主義の侵略を受けており、弱小な国々に対して我が身同然の感覚を持っている。中国による平和促進や世界秩序の維持には、多くの人が期待している〉と述べている。
南シナ海に着々と軍事基地を建設して日本や東南アジアの国々を不安に陥れている中国こそが、世界秩序を揺るがしている存在ではないか。