日本各地にある有名な縁切りスポットには由緒ある寺社が多い。大阪市天王寺区の「鎌八幡」は、真田幸村が境内の榎に鎌を突き刺して戦勝を祈願したことで有名だ。それが江戸以降に密教の加持祈祷と結びついて悪縁断ちの信仰が広まった。現在も住職が御神木に鎌を突き刺して悪縁断ちを祈願する「特別祈祷」が行なわれる。
京都市東山区の「安井金比羅宮」は平安時代に崇徳上皇があらゆる欲を絶って讃岐の金刀比羅宮に篭ったことから、「断ち物の祈願所」として信仰され、週末になると約2000人が縁切り祈願に訪れるという。
東京都板橋区の「縁切榎」は昔から嫁入りの際、縁が短くなることを怖れてこの榎を迂回したことで縁切り信仰の対象となり、多くの絵馬が奉納されている。これらの縁切りスポットで近年目立つのは、中高年男性に向けられる怨嗟だ。
「最近は50~60代の妻が『夫と一緒にいるのがイヤだから縁を切りたい』と願う“熟年離婚タイプ”や、金を無心する老親との縁切りを望む子供世代が結構いる」(鎌八幡の杉山契光住職)
もちろんこれらの寺社は人を呪うのではなく、あくまで悪縁との縁切りを祈る場である。だが、実際にこれらに奉納された絵馬を見ると、妻が中高年の夫に向けたと思われる恨みつらみが散見される。
〈●●62才男が早く倒れるようにお願いします〉(編集部注・“●●”は絵馬では実名)
〈夫が一日も早く死んであの世に行き、私と娘で穏やかに暮らせますように〉