国内

“kaigoスナック”は食べる楽しさを感じられる情報拠点

歯科医の亀井倫子ママ(写真右手前)、看護師のチーママ、嚥下食メーカーの人たちも助っ人としてカウンターに

 高齢になるとあちこち衰え、配慮が必要な場面も多くなる。でも食べておしゃべりして笑って寝てと、日常の営みや喜びは死ぬまで変わらないのだ。訪問歯科医として高齢者や障害者の食の悩みに向き合い、“いつまでも食べることを楽しむ”ための知識と情報、アイディアを発信している亀井倫子さんに聞いた。

「歯があれば、食べられるというものでもないのです」

 開口一番、亀井さんの言葉に驚かされた。

「【1】まず食べ物を見て形状を認識し、唾液を出す。
【2】食べ物を口に入れたらくちびるを閉じ、あごを動かし歯で噛み砕き、舌やほおの筋肉を動かして唾液と混ぜ、ドロドロの塊(食塊)に。
【3】舌の複雑な動きで食塊をのどの奥に送り込む。
【4】嚥下反射が起きることで喉こう頭とう蓋がいと呼ばれる弁が気管への入口をふさぎ、食塊を食道へ。
【5】食道の筋肉の収縮で、食塊をさらに胃に送り込む。

【2】【3】の工程は咀嚼、【4】【5】は嚥下と呼ばれ、この一連の流れはあご、くちびる、舌、ほおなどの調和が保たれることによって成り立っています。若くて元気な時は、ほとんど無意識に行われますが、加齢で唾液や歯が減ったり、義歯が合わなくなったり、また、舌などの筋肉が動きにくくなったりします。どこに不具合が起きても食べづらく、あるいは食べられなくなります」

 舌の動きが悪くなると、たとえばパサパサした刻み野菜などは口中に広がってまとまらず、歯茎とほおの間にたまったりするし、のどの奥へ送り込めないため、いつまでものみ込めない(咀嚼障害)。

 また嚥下反射やのど、食道の筋肉が衰えると、食べ物が気管に入り込んでひどくむせたりするという(嚥下障害)。

「脳梗塞などの急性期や、うつや認知症に処方される向精神薬の服用でも嚥下障害が起こりやすくなります。このようにして高齢になると食べられない条件が次々に。低栄養のリスクがアップ。日常の生活動作が鈍くなって体力が落ち、認知症など要介護のリスクが高まります。

 口腔ケアは命にかかわらないと後回しにされがちですが、肺炎予防や口腔周辺筋のリハビリにもなり、食べる機能を支えるので、実は介護予防の筆頭に掲げたいケア。急に体重が減ったり、歩行速度が落ちたりしたら、食べる機能の低下を疑ってみることも大切です」

◆咀嚼や嚥下の機能低下をカバーする嚥下食

 さらにこう続ける。

「歯や咀嚼・嚥下の問題で食べづらくなってきても調理方法である程度カバーできます。

 たとえば歯茎でつぶせるくらいやわらかく煮たり、ミキサーで細かく砕いたり、口の中でまとめてのみ込みやすいようとろみをつけたり。食べ物の物性を調整するのです。

 でも忘れてはいけないのは、それぞれの人に合わせて繊細なさじ加減が必要ということ。嚥下障害があっても“ミキサー食は絶対イヤ!”という人もいます。食べることは栄養摂取だけではないからです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン