自分の五感のセンサーを全開にして、目の前の一瞬一瞬をまるで初めてのことのように感じとる。すると花びらの上に落ちた影の美しさに目がとまる……という少年のようなみずみずしい感性は、ブログのあちこちに散らばっていました。
「 一人取り残された稽古場の匂い・・古いラジカセ・・無機質に跳ね返してくる再生ボタンの弾力・・ああ、、なんか思い出しますね。帰り道、僕の頬に触れる冷たい風は、蘇ったあの日の熱い思い出をそっと心の奥底に戻してくれました。。」(12月27日)
これは先輩の風間杜夫さんが落語に挑戦する姿から、23歳の時の自分を思い出した、というくだり。記憶をかきたてる匂い。指先で感じたボタンの感触。聴覚、嗅覚、味覚、視覚、触覚、五感を総動員して一瞬一瞬をかけがえのないものとして感じとっている姿。SMAPの時にはよく見えなかった、もう一人の「稲垣吾郎」が現れてくる。
一方で、稲垣さんは最近の心境の変化にも言及していました。
「香取君のポップな絵に感動したり、長野県の色鮮やかな紅葉に心洗われたりと・・趣味や心境も少しずつ変わってきてます。そろそろ心が色彩を欲してきてるのかな。ようやく周りの人々によって色づけしてもらい始めた感覚」(12月22日)
とはいえ、もともと白と黒が好きだったと告白。「白と黒のシンプルな物に囲まれて生きていきたいと思っていたんですよ。カラフルに満ちた世界で仕事をしてるぶんプライベートに原色はいらないというか・・」
なるほど、SMAP時代は特に極彩色だったのかも。白と黒のイメージについて、言葉はこう続く。
「絵画でいうと、クロード・モネ『雪のアルジャントゥイユ』の雪景色。ベルナール・ビュッフェの初期作品。写真なら杉本博司さんの海景シリーズ。漆黒の海と自然の光が作り出す美しいモノトーンに惹かれます
うーん、造詣が深いな。文化やアートに対する素養が垣間見えた。その瞬間、「あ、失礼、イメージを語り過ぎました。笑」。熱くなったとたんにクールダウン。何ともこの人らしい、一人つっこみぶり。読んでいるこっちもフっと笑いがこぼれます。
「人生における楽しみを見つけるのが上手だなぁ、と思う」
「博学で優雅でセレブなのに嫌味がなく謙虚で穏やかで優しい」「心がきれいになるな……このすずやかさはすごい」などTwitterでもその評判は拡散中。
みずみずしい少年のような感性。距離をもって自分を見つめるクールな大人の視線。少年と大人が不思議に同居する「稲垣吾郎」の感覚。これからどんな「新しい地図」が描き出されていくのか、ブログの文字から目が離せません。