昨年秋に“解禁”し、注目を集めている稲垣吾郎・香取慎吾・草なぎ剛のSNS。今回は先日読者登録数が50万を突破したばかりの稲垣のブログについて、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。
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「わあ見て、このゆげ!」
手に持っているのはモツの串刺し。もやもやっと立ち上る白い湯気。それに驚き、リアクションする人。そのシーンに、驚かされたのはこっちです。
たかが「湯気」に大の大人が驚くとは……。温かいものから湯気がたちのぼるって、当たり前のことでしょ? と思ってから、ふと考えさせられました。
もしかしたらこの人、熱々のお総菜を商店街の店先でかぶりつくのは初めてなのかも?だからこんなに反応している? もしそうだとすれば、みずみずしい体験には違いない。とにかく「見知らぬ世界に出会った」ような喜びが、その人の表情と全身から溢れ出ていたのです。
その人とは……稲垣吾郎さん。新年1月4日に放送された『梅ゴローのぶらり旅』(フジテレビ)は、東京下町・蒲田の地図を片手に稲垣吾郎、梅沢富美男、宮澤智アナ3人組が歩き回る、というシンプルな2時間番組。
今やテレビで「ぶらり」ものは人気コンテンツです。あちこちの局に「街歩き」番組が溢れ返っていますが、初対面の人に妙に馴れ馴れしく接したり、「電車(あるいはバス)が来るまであと何分しかない」とあおってみたり。視聴者がイラッとさせられることも多いこのごろ。
しかし、『梅ゴローのぶらり旅』は、どのパターンとも違っていました。
何の変哲もない日常風景にいたく感動する姿が、イヤミでなく何とも爽やか。串刺しの湯気に驚き、揚げたてのメンチカツの熱さに動揺し、開店前の風呂屋で思わず女湯を覗き見。タイルの上で嬉しそうにデッキブラシを滑らす……と、まるで小学生。
そう、小学生の感性。と言っても見下しているわけではありません。子供のように未知の世界に直に出会う喜び。五感でみずみずしく感じリアルに味わう姿がありました。
大人だと、なかなかこうはいきません。頭でっかちで、「もうわかっている」と思い込んでいるから。だからちゃんと感じようとしない。感動する力が干からびている。初めて世界に触れるような喜びを抱くこと自体が、難しいのです。
それに対して稲垣さんは、まるで遠くの星から落ちてきた王子様のよう。純なリアクションに満ちていました。世界に初めて触れるようなそのみずみずしい感性、いったいどこから来ているのでしょう? どこに秘密があるのか?と思いヒントを探すと……。
稲垣さんが新たに始めたブログの中にこんな言葉が見つかった。「何気ない日常の景色のなかに新たな魅力を発見すると嬉しい」。
「今まで見過ごしていた隠れた美しさ。きっと自分の心の在り方次第で見えてくるものまで変わる気がします……相手の小さな変化や隠れた魅力に気がつける大人に早くなりたいものです(もう大人ですが)」(2017年12月11日)
「何気ない日常の景色のなかに新たな魅力を発見」するから、「モツの串刺しから立ち上る湯気」に驚くことができるのでしょうね。
この日のブログのテーマは「新しい目」とあります。朝起きたら蕾だったユリが開花していたと書いて、話はちょっと意外な方向へ。
「ん? おや?? 見つけた 花びらに映る枝の影がなんとも美しいではないか」
添えられた写真には、花びらの上に落ちる枝の影が。黒い線がまるでレースの飾り模様のよう。稲垣さんが目にとめたのは「花」だけではなくて、ささやかな、「今まで見過ごしていた隠れた美しさ」。そうか、「新しい目」とはあらためて日常と新鮮に出会う感覚のことかも。