一世を風靡した不良バイクチームのメンバーだった2人は、若くしてスターへの道を歩み始める。血判状で友情を誓い合い、青春を謳歌した仲。しかし、互いが互いを思い合うからこそ、「あいつのために」と起こした行動が衝突を生んでしまう。次第に疎遠になり、42年。彼らの友情を再び引き戻したのは、早すぎる「仲間の死」だった。
「お前はどうしようもないヤンチャで、クールスに入れば規律を守るようになると思ったんだけど、お前は変わらなくて。もう一度みんなで走れたら、面白かっただろうな」
岩城滉一(66才)が弔辞を述べると、参列者のすすり泣く声が響いた。12月18、19日、神奈川県川崎市の寺院で伝説のバイクチーム『クールス』の元メンバーである「マチャミ」こと玉川雅巳さん(享年64)の葬儀が行われた。故人が愛用していた大型バイク、ハーレーダビッドソンのエンジンをふかし、仲間たちは爆音を聞きながら出棺を見送った。
通夜では、かつてクールスのメンバーだった舘ひろし(67才)と岩城が男泣きし、肩を抱き合って親友の死を悼んだ。
青春を共にし、芸能界の第一線で活躍してきた2人は、お互いを思いやるゆえに長らくすれ違いが生じていた。そんな彼らの抱擁は、メンバーにとってあまりにも感慨深い和解の光景だった。その姿を見ながら、ある参列者はこう思ったという。
「マチャミの生き様と死が、クールスをもう一度1つにしてくれた」
出会いは40年以上前に遡る。1974年、それぞれバイクチームを組んでいた20代前半の舘と岩城が、都内の飲食店で鉢合わせた。眼光鋭い男たちのニアミスに、緊張が走る。だが、店の外に見知らぬ黒いバイクがズラッと並んでいるのを見た舘は、岩城にこう話しかけた。
「あのバイク、きみたちの?」
以来、1才違いの2人は意気投合し、「少数精鋭で面白いチームを作ろう」と、原宿を拠点にしたバイクチーム『クールス』を結成する。元メンバーでミュージシャンの水口晴幸さん(65才)が当時を振り返る。
「“縁起の悪い日がいい”と言って、12月13日の金曜日、東京・青山にあったハンバーガー店に集まってチームを結成してね。《このチームはリーダー(舘)の独裁により運営される》と書かれた血判状に、メンバー17人がナイフを握って右手中指に傷を入れ、血判を押したんだよ」(以下、「」内は水口さん)
黒い革ジャンに黒いジーンズ、リーゼントヘア、そして黒いバイクというそろいのスタイルで都内を走り回した。