コンビニやスーパーの棚のなかでもカップ麺コーナーに思わず惹きつけられる人は少なくないのではないか。それだけ、日々激戦が繰り広げられている場所でもある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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カップ麺の進撃が止まらない。その勢いは、総務省の家計調査(総世帯)におけるカップ麺への年間支出金額にも現れている。全国平均で比較すると、2006年には2624円だったのが10年後の2016年には3586円に。この10年で、他のうどん・そば類などへの支出が目減りするなか、カップ麺は37%という大きな伸びを示した。
特にこの数年の傾向として特徴的なのは”名店監修”のアイテムが続々と発売されたことだ。昨年も、Japanese Soba
Noodles蔦、鳴龍、金色不如帰といったといったミシュランガイド掲載店のカップ麺が次々に発売された。
もはや日常のものになりつつある「名店監修」カップ麺。そのレベルが高いのは言うまでもないが、近年になって新たな潮流が起きつつある。名店監修カップ麺の「多様化」と「PB(もしくは流通の限定)化」だ。
まず「多様化」では、東京の老舗日本そば店が監修した「神田まつや 鶏南ばんそば」が挙げられる。昨年12月に日清食品から発売され、ファンの間で話題を呼んだ。実は神田まつやはこうしたコラボアイテムに積極的なそば店。この数年、鶏南ばんのほか、鴨南ばんなどいくつかのカップ麺を監修している。
とりわけ今年の具材の鶏肉と下仁田ネギがとてもおいしかった。サイズが小ぶりになるのはやむを得ないとしても、食感や味わいから素材が想起された。こういう具材はそうそうない。特にカップ麺の場合、スープや麺が及第点でも具でがっかりさせられることが少なくない。麺や汁も(もちろん本物とまでは行かないが)好感度が高かったし、具材でもここまで味を感じられるものにしてくれるあたりに、老舗そば店とカップ麺最大手の協業にかける気概を感じた。
その他、「多様化」という意味で昨今増えているのは、「汁なし」だ。焼きそば、まぜそば、汁なし担担麺といった汁のないカップ麺にも、名店監修の商品が増えてきているということにも触れておきたい。