ミッドタウン赤坂が竣工した2007年、三井不動産は同じ日比谷エリアにある帝国ホテルの株式33.1%を862億円で取得した。拒否権が発動できる33.4%までは持てなかったが、現在も圧倒的な筆頭株主で、2007年当時の会見で三井不動産の岩沙弘道社長(当時。現会長)は、今回のミッドタウン日比谷の構想と同時に、広域の再開発構想があることも明かしていたものだ。
前述の三信ビルの解体が始まったのが同じ2007年で、ミッドタウン日比谷は10年の歳月を経て、ようやく完成したことになる。そうした時間軸の長さを考えると、帝国ホテルにおける再開発構想も長期的なものにならざるを得ない。
帝国ホテルと三井不動産はお互いに再開発の観点から幹部同士で勉強会は重ねてはいるが、東京五輪時は帝国ホテルは現状のまま運営し、再開発は五輪後に何かしら具体化してくるかもしれない。まずはミッドタウン日比谷の開業後、帝国ホテルが回遊者の取り込み効果をどれだけ得られるかが焦点で、そのシナジーが高ければ、勉強会での議論も急速に発展していくのではないか。
しかも、来春には帝国ホテルのライバルであるホテルオークラが、虎ノ門のホテルオークラ東京の本館建て替えを完工し、ツインタワーを擁して東京五輪を迎えることになるだけに、帝国ホテルの首脳陣も内心は、それほど安閑としてはいられないはずだ。
さらに、その帝国ホテルの将来の再開発を占ううえで、業界関係者が注目する出来事が最近もあった。
同ホテルに隣接する、「NBF日比谷ビル」(旧大和生命ビル)である。同ビルにはマツダの東京本社などが入っており、ビルの頭文字であるNBFとは日本ビルファンドのこと。日本ビルファンドは三井不動産系の不動産投資信託(REIT)なのだが、昨年末、このビルを三井不動産が640億円で取得している。ビル取得によって、三井不動産は少なくても、隣りの帝国ホテルを含んだ大型再開発という点で、イニシアティブを握ったことになる。
ミッドタウン日比谷は、帝国ホテルとは逆の隣接地に東宝ツインビル、それに今治造船が所有する日比谷マリンビルがあり、NBF日比谷ビルの隣接地には、NTT日比谷ビル、さらに東京電力ホールディングスの本社ビル、みずほ銀行内幸町本部ビル(旧第一勧業銀行のビル)などが並んでいる。
三井不動産にしてみれば、日比谷から内幸町にかけてのこのエリアを、地権者の協力も仰ぎながら面展開で一大再開発することこそがゴール目標のはず。そうなれば、名実ともに日比谷は日本橋に次ぐ、「第2の三井村」になる。今回のミッドタウン日比谷はまだ、その序章に過ぎないといえそうだ。