ストレスががん、脳卒中、心筋梗塞という日本人の「3大疾病」の要因であるというのは、今や世界の医学界の常識になっているという。そんな状況にあるなか、最近では加齢による「加齢性ストレス」に注目が集まっている。つまり、ストレスをもたらす「仕事」から解放されたというのに、高齢になり様々なストレスを抱える人が増えているのだ。
かわいい孫と過ごせば楽しくてストレスも吹っ飛ぶだろうと言われても、実際には、その孫がストレス要因になることもある。渡辺豊さん(72・仮名)がぼやく。
「娘夫婦が近くに住んでいるので、周囲からは“寂しくなくていいですね”と言われるが、孫の世話を押しつけられて大変です。娘は、孫の幼稚園への送り迎えは私の役目だと勝手に思い込んでいる。最近、久しぶりに昔の友人と会う機会があったけど、孫の送り迎えが最優先だから、泣く泣く断わったよ。なのに娘からは感謝の言葉ひとつないんだからねぇ」
60歳以上の1000人を対象に生活の満足度を調査した大阪府門真市医師会の辻川覚志医師によれば、正月やお盆休みに子供や孫が帰ってきて、彼らが戻った後にストレスが原因と思われる体調不良に見舞われる人が少なくないという。
「子供や孫が帰ってくるということで、はりきって食事の支度や布団の上げ下ろし、お茶出しなど、普段より忙しく動き回りますが、加齢によって体力が低下しているので、それが大きな身体的ストレスになってしまう。また、子供や孫たちが帰ってしまうと、急に寂しくなり、それが精神的なストレスになる場合もある。体調を崩したくないという理由で、“お年玉は振り込むから今年は来なくてもいい”と帰省を断わる方もいたほどです」