「我が党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた。いよいよ実現の時が来た」
安倍晋三首相は国会召集日(1月22日)の自民党両院議員総会でそう宣言した。政治が国のあり方を大きく変える憲法改正に踏み込むというなら、国民はそれによって「明日は昨日とどう変わるのか」、火のような論戦を聞いてみたい。
ところが、国会が始まっても、改憲という「結党以来の悲願」に挑むはずの自民党内には全く熱気が感じられない。自民党憲法改正推進本部の幹部が語る。
「本気で憲法改正を発議するなら、今頃は党内一丸となって国民に改憲の必要性を訴えていかなければならない。しかし、推進本部の幹部席には高村正彦ら引退議員と安倍側近が並び、総理へのお付き合いで『ああでもない、こうでもない』と議論しているだけ」
長年、憲法改正国民運動の先頭に立ってきた保守派の論客、櫻井よしこ氏は、そんな自民党内のムードを見かねてこう叱責している。
「冷めたピザではないのだから、もっと熱をあげてほしい」(1月23日に開かれた「国家基本問題研究所」の月例研究会より)
“冷めたピザ”みたいな改憲論議など国民だって食べたくないが、なぜ、自民党内がそうなっているかの舞台裏を覗くと実力者たちの思惑が見えてくる。
「自民党リベラル派」を看板にする岸田文雄・政調会長はこの間、9条護憲派から改憲派へと転向し、“変わり身の早さ”を発揮した。
「9条の改正は不要という考えに変わりはない」