文在寅政権が慰安婦合意を事実上破棄し、ゴールポストを動かすのはほぼ確実だろう。再び韓国は官民一体で歴史戦を仕掛けてくると思われる。次の主戦場はユネスコだ。現代史家の秦郁彦氏が解説する。
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ユネスコは3つの文化遺産事業を行っている。富士山やガラパゴス諸島、原爆ドームや万里の長城のような自然や景観、歴史的建造物を登録する世界遺産。歌舞伎や和食、アリランなど伝統芸能や文化などを保護する無形文化遺産。
そして、1997年にユネスコ事務局の発案で新設された古文書や書物など歴史的な記録を保護するための記憶遺産(「世界の記憶」)である。当初はイギリスの「マグナカルタ」、ドイツの「グリム童話」、韓国の「朝鮮王朝実録」などの古典が登録されていた。
潮目が変わったのは2009年の「アンネの日記」以来かと思う。次第に、政治性を帯びた近現代のテーマが増えたのだ。韓国の「光州事件」、カンボジアの「ポル・ポトの虐殺」、中国の「南京虐殺事件」など第二次世界大戦後のテーマまで登録されはじめた。
「世界の記憶」に対する関心が薄かった日本は、遅れて2011年に登録された山本作兵衛の「炭鉱画」が第一号である。
その後、「御堂関白記」などが続き、2017年は「上野三碑」「朝鮮通信使」(韓国と共同)が登録されて、計7件となった。有力候補だった「杉原千畝のビザ」や、中国の天安門事件に参加した学生の記録が「落選」した。