【著者に訊け】銀色夏生氏/『こういう旅はもう二度としないだろう』/幻冬舎/1300円+税
詩人・銀色夏生が旅に出た。それも一般の団体ツアーに連続で、一人で参加したというから驚きである。
「私は習い事を11個同時に始めたこともあるくらい、思い立ったらとことんやる性分なんです。今回も、子供が手を離れたし旅でもしようかと思い、とりあえずは一年分、目につくツアーを片っ端から予約したのがそもそもの始まりでした」
『こういう旅はもう二度としないだろう』は、そんな旅の道程を綴ったエッセイ集。赤の他人と寝食を共にし、何かと煩わしいことも多いツアー旅を、氏は自ら〈そっけない書き方に驚きました〉とあとがきに書くほど淡々と綴る。良いことも悪いことも評価や是非を挟まず、丸ごと感じとるのが、詩人という人種らしい。
以下ツアー名を並べれば、「ベトナム『世界遺産の街ホイアンに4連泊』」「ニュージーランド『先住民のワイタハ族と火と水のセレモニーを体験するツアー』」「スリランカ『仏教美術をめぐる旅』」「インド『薄紅色に染まる聖域 春のラダックツアー』」など、比較的秘境系が多く、参加人数も5~30名強と、まちまちだ。
まずは2016年1月、〈準備運動的〉に行ったホイアンで、彼女は何かにつけて文句の多い〈酒おじさん〉の隣で〈この人は不平不満が言葉みたいな人だ〉などと思いながら、特に美味でもない食事を口にしたりする。