臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、すっかり人気者の仲間入りをした出川哲朗について分析。
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事件を知った時には、思わず「ヤバイよ、ヤバイよ~」と言ったのではないだろうか。約580億円の仮想通貨「NEM」が不正アクセスにより流失した仮想通貨取引所「コインチェック」。そのCMに昨年12月から出演していたのは、好感度上昇中の出川哲朗だった。
事件後、コインチェックの公式サイトからは、出川の画像も動画も削除されたが、CMが反響を呼んだことで、コインチェックに関心を持った購入者も少なくないという。それだけ出川のインパクトが大きかったということだが、なぜ“抱かれたくない男”ナンバーワンだった彼が、誰からも好かれる人気者になったのだろうか。
そのきっかけは、日本テレビ系列の『世界の果てまでイッテQ!』への出演からだという。この番組で何事にも身体を張って真面目に頑張る姿や、その人柄が認知され始めると、好感度はみるみるうちに上昇したのだ。
「やっている仕事は変わらないのに世間の評価が変わってきた」と、ある番組で話したという出川。その理由は、番組によって彼の見せ方が変わったことが大きいのではないだろうか。というのも、リアクション芸だけでなく、彼という人間が作り出すスト―リーの面白さが人を惹きつけていると思うからだ。
自分はこういう風にやっていくという彼なりのスタイルが一貫してあっても、リアクション芸はその場限り。一生懸命さは見えても、本人の人柄まではわからなかった。だが芸風もスタイルもすべてストーリー仕立てにしてリアクションを見せたことで、出川のよさや面白さが伝わりやすくなったのだ。コミュニケーションの手法として用いられる、ストーリーテリングみたいな感じと言ったらいいだろうか。
ストーリーテリングとは、データや事実を述べるだけより、物語仕立てでコミュニケーションしたほうが理解されやすく伝わりやすいというもの。出川のリアクション芸も、一発芸的なところからストーリーテリングに変わったことで、人間味を感じさせ、共感を呼びやすくなったのだろう。