嵐の松本潤主演ドラマ『99.9 ―刑事専門弁護士― SEASONII』(TBS系)が平均視聴率で15%を維持し、今クールのドラマの中でも好評を博している。「起訴されたら有罪率99.9%」といわれる刑事事件で、松本演じる弁護士が「0.1%」を諦めず、真実を追い求めていくというストーリー。実際、司法統計によると、計算方法により見方は異なるものの有罪率は約99.8%(平成26年度)とされ、検察に起訴されれば有罪になる確率は非常に高い。そんな中、“リアル松潤”ともいえる「無罪獲得弁護士」に話を聞いた。
2017年12月、千葉地裁で裁判員裁判が開かれた。千葉県佐倉市で同年7月、無職男性が複数人から暴行を受けて死亡した事件。傷害致死の罪に問われた56歳の男性被告は、検察から懲役12年を求刑されていたものの「無罪」となった。被告の弁護を務めたアトム市川船橋法律事務所代表・高橋裕樹弁護士が語る。
「争点は、被害者と口論になって殴られた被告が、周囲の男たちを煽って暴行させようと共謀していたかという点でした。事実を突き詰めると、被告は被害者を殴っておらず、一緒に暴行しようと意思を通じ合っていたことはないことがわかりました。それを整理して主張し、裁判所に認められたのです」
裁判所は、「周囲が被告の意思と無関係に暴行を加えた可能性がある」として、検察側の主張を退けた(検察側は控訴せず)。
実はこの高橋弁護士、2016年5月にも千葉地裁で行われた麻薬密輸事件でタイ人被告2人の無罪を勝ち取っている。2人はカップルで、タイの知人に頼まれて、覚せい剤が隠された浄水器用フィルターやコーヒーメーカーを日本に持ち込んだ。2人は知人の「商品見本だ」という言葉を信じて持ち込み、「覚せい剤が入っていたとは知らなかった。まったく疑わなかった」と主張したが、検察は「疑問を持って当然だ」として懲役12年、罰金500万円を求刑していた。
「被告2人と知人のフェイスブックのやりとりなどを確認し、2人が日本への旅行を楽しみにしていて、知人を疑うフシがなかったことを証拠として提出しました」(高橋弁護士)
この無罪判決に対し検察は控訴したが、東京高裁は控訴を棄却した。
別の複数の弁護士に話を聞くと、国選で刑事事件を担当することが比較的多い弁護士でも「無罪判決を得られるのは一生に1回あればいいな、という印象」で、「2件の無罪を2年連続で勝ち取るのはかなり珍しい」という。中には「無罪になる余地のあるラッキーな事件が連続で回ってきただけ。強運が羨ましい」というベテラン弁護士も。
とはいえ、検察もメンツにかけて有罪にしようとするのが刑事事件の裁判だ。“リアル松潤”はどんな弁護方針なのか。